先史(約700万年前〜前1万年)
文字の記録が残らない時代。人類系統の分岐と拡散、道具と表現、氷期の気候、そして農耕の始まりまでを扱います。
この区間について
この区間は、文字による同時代の記録が残っていない時代を扱います。年代は化石や遺跡の層位、放射性炭素年代測定などの自然科学的な方法から推定されたもので、年表ではこの区間の全件を「およそ」または「諸説あり」として示しています。扱う時間の幅が極端に長いため、年表ではこの区間だけ対数の目盛を使い、新しい時代ほど横に広く表示しています。
人類系統の化石
最も古い収録項目は、中央アフリカのチャドで見つかったサヘラントロプス・チャデンシスの化石(約700万年前)です。人類系統に属するかは研究者により見解が分かれるため、年表では「諸説あり」として個別の出典を付けています。以後、アルディピテクス・ラミダス(約440万年前)、アウストラロピテクス・アファレンシス(約320万年前)、ホモ属の出現(約230万年前)、ホモ・エレクトスの出現(約190万年前)、モロッコのジェベル・イルードで見つかったホモ・サピエンスの化石(約30万年前)が続きます。この段階の収録項目はアフリカに集中しています。
拡散
約7万年前にホモ・サピエンスのアフリカ外への拡散が始まったとされ、約6万5000年前にオーストラリア大陸、約4万5000年前にヨーロッパ、約1万6000年前にアメリカ大陸への到達が収録されています。ヨーロッパではネアンデルタール人の系統が約60万年前に分岐し、約4万年前に消滅したとされます。到達の年代は新しい発見によって繰り上がることがあり、いずれも幅のある推定です。
道具と表現
石器は約260万年前のオルドワン型が最古の収録項目です。火の使用を示す遺構は約80万年前、洞窟壁画はショーヴェ洞窟などが約3万7000年前、ラスコー洞窟が約1万7000年前です。日本では約1万4000年前の縄文土器が収録されています。
氷期の気候
気候に関わる項目として、約7万4000年前のトバ火山の巨大噴火、約2万年前の最終氷期最盛期、前1万2900年から前1万1700年のヤンガードリアス期の寒冷化、約1万1000年前の更新世末の大型動物の絶滅を収録しています。
農耕の始まり
前1万2000年から前9000年ごろ、西アジアの肥沃な三日月地帯で農耕と牧畜が始まったとされます。前1万500年ごろのイェリコの定住集落も同じ時期の項目です。農耕はこのあと各地で別々に始まり、その先は「古代」の区間で扱います。
収録の偏りについて
この区間の44件の内訳は、アフリカ13件、ヨーロッパ13件、世界規模5件、西アジア・中東3件、日本3件、南北アメリカ3件、南アジア・東南アジア2件、オセアニア2件です。これは発掘と研究の蓄積の偏りを反映したもので、その地域で起きたことの多寡を示すものではありません。年表では、空白を埋めるために典拠のない記述を加えることはしていません。
主な出来事(23件)
年表に収録した中から、表示の優先度が高い項目を抜き出しています。出来事名を押すと、年表のその位置が開きます。
| 年代 | 地域 | 出来事 |
|---|---|---|
| 前7000000年 | アフリカ | サヘラントロプス・チャデンシスの化石年代 中央アフリカのチャドで発見。人類系統に属するかは研究者により見解が分かれる。 |
| 前4400000年 | アフリカ | アルディピテクス・ラミダスの化石 エチオピア・アラミス。樹上生活と二足歩行の両方の特徴を持つ。 |
| 前3200000年 | アフリカ | アウストラロピテクス・アファレンシス(通称ルーシー) エチオピアで発見された化石。直立二足歩行の骨格的特徴が確認されている。 |
| 前2600000年 | アフリカ | 最古の石器(オルドワン型) エチオピア・ゴナ遺跡などで出土。 |
| 前2300000年 | アフリカ | ホモ属(ホモ・ハビリス)の出現 石器の製作と結びつけて記載された最初のホモ属。 |
| 前1900000年 | アフリカ | ホモ・エレクトスの出現 アフリカで出現し、後にユーラシアへ分布を広げた。 |
| 前800000年 | 世界規模 | 火の使用を示す遺構 イスラエル・ゲシャー ベノット ヤーコブ遺跡など。恒常的使用の開始時期は議論がある。 |
| 前600000年 | ヨーロッパ | ネアンデルタール人系統の分岐 分岐年代は化石と古代DNAで推定に幅があり、55万〜80万年前とされる。 |
| 前300000年 | アフリカ | ホモ・サピエンスの化石(ジェベル・イルード) モロッコで出土した現生人類に連なる化石。 |
| 前74000年 | 南アジア・東南アジア | トバ火山の巨大噴火 スマトラ島。人類集団への影響の大きさには議論がある。 |
| 前70000年 | 世界規模 | ホモ・サピエンスのアフリカ外への拡散 遺伝学と考古学の双方から復元された移動。時期には幅がある。 |
| 前65000年 | オセアニア | オーストラリア大陸への人類の到達 マジェドベベ遺跡の年代測定では約6万5千年前とされるが、年代には研究者間で幅がある。 |
| 前45000年 | ヨーロッパ | ホモ・サピエンスのヨーロッパ到達 ブルガリア・バチョキロ洞窟などの年代測定による。 |
| 前40000年 | ヨーロッパ | ネアンデルタール人の消滅 ヨーロッパ各地で4万年前前後に化石記録が途絶える。最後まで残存した地域については議論がある。 |
| 前37000年 | ヨーロッパ | 洞窟壁画(ショーヴェ洞窟ほか) フランス南部、アルデシュ。動物を描いた大規模な壁画群。約37,000年前から複数期にわたる。 |
| 前20000年 | 世界規模 | 最終氷期最盛期 海水準が現在より約120m低下し、大陸棚が陸化した。 |
| 前17000年 | ヨーロッパ | ラスコー洞窟の壁画 フランス。大型動物を主題とする壁画群。 |
| 前16000年 | 南北アメリカ | アメリカ大陸への人類の拡散 ベーリンジア経由とされる。到達年代には幅がある。 |
| 前14000年 | 日本 | 縄文土器の出現 日本列島。世界最古級の土器群のひとつ。 |
| 前12900年〜前11700年 | 世界規模 | ヤンガードリアス期の寒冷化 温暖化の途中で約1200年間、寒冷な気候に戻った。 |
| 前12000年〜前9000年 | 西アジア・中東 | 農耕・牧畜の開始(肥沃な三日月地帯) ムギ類の栽培化とヤギ・ヒツジの家畜化が進行。 |
| 前11000年 | 世界規模 | 更新世末の大型動物の絶滅 マンモスなど大型哺乳類が各大陸で減少・消滅した。 |
| 前10500年 | 西アジア・中東 | イェリコの定住集落 ヨルダン川西岸。前10500年頃から定住が始まり、前8000年頃には石壁と塔を伴う集落となった。 |