世界歴史年表

世界はいつ「一つ」になったか

年表の最上段に「世界規模」という行があります。ここに置いてあるのは、どの地域の出来事とも決めにくいものです。この行だけを左から右へ目で追ってみてください。あることに気づくはずです。古いほうはすかすかで、新しいほうが詰まっている。世界が「一つ」として語れるようになったのは、いつからなのでしょうか。

最初はほとんど空いている

世界規模の行の先史には、約80万年前の火の使用を示す遺構、約7万年前のホモ・サピエンスのアフリカ外への拡散、約2万年前の最終氷期最盛期などが並びます。これらは地球全体に関わることですが、当時の人々が世界を一つとして意識していたわけではありません。年表がそう分類しているだけです。そして古代と中世のこの行は、ほぼ空白になります。

道がつながる

1206年、世界規模の行にモンゴル帝国期のユーラシア交易網。ユーラシアの東西が一つの政治圏の下でつながった時期です。マルコ・ポーロの旅行(1271年)やイブン・バットゥータの旅行(1325年)は、この往来のなかで書かれました。ただし、この時点でつながっていたのはユーラシアとアフリカの一部までです。南北アメリカとオセアニアの行は、まだ別の世界として並んでいます。

海が一周する

1492年、南北アメリカの行にコロンブスの大西洋横断航海。1498年に南アジアの行でヴァスコ・ダ・ガマのカリカット到達。1519年、世界規模の行にマゼラン船団の世界周航。ここで海路が一巡します。続いて1500年ごろの大陸間の作物・家畜の交換、1518年からの感染症の南北アメリカへの伝播、1600年ごろの大西洋奴隷貿易の拡大期。つながったことの結果が、同じ行に続けて並びます。この行が初めて密になるのが、この区間です。

情報が人より速くなる

1837年、世界規模の行に電信の実用化。1866年に大西洋横断電信ケーブルの敷設。それまで、情報は人と船の速さを超えられませんでした。ここで初めて、報せが人より速く大陸を渡ります。同じ時期に、1869年の大陸横断鉄道の開通、1891年のシベリア鉄道の起工、1914年のパナマ運河の開通。移動と通信の両方が短くなっていきます。

「世界」を名乗る枠組み

1914年、世界規模の行に第一次世界大戦。この行で、戦争が初めて世界規模の項目になります。1920年に国際連盟、1944年にブレトン・ウッズ協定、1945年に国際連合の発足、1948年に世界人権宣言の採択。1955年のバンドン会議は、それまで枠組みの外に置かれていた国々が集まった会議です。年表のこの区間で、「世界」を単位とする取り決めが次々に作られていきます。

いまの密度

1991年にWorld Wide Webの一般公開、1995年に世界貿易機関(WTO)の発足、1997年に京都議定書の採択、2008年に世界金融危機、2015年にパリ協定の採択、2020年にCOVID-19の世界的流行。世界規模の行の現代の区間には、ほかのどの区間より多くの項目が入っています。経済も環境も感染症も、国境で区切れない形で動いている、ということです。

「世界」に入っていなかった人たち

1945年の国際連合の発足の時点で、アジアとアフリカの多くの地域はまだ植民地でした。1955年のバンドン会議は、その枠組みの外に置かれていた国々が集まった会議です。1960年のアフリカの年、1947年のインドとパキスタンの分離独立、1975年のパプアニューギニアの独立。年表を見ると、「世界」の枠組みが作られた時期と、その枠組みに入る国が増えた時期が20年ほどずれています。世界が一つになる過程は、同じ速さで全員に及んだわけではありません。

年表を読むときに

「世界規模」の行の項目が現代に偏っているのは、世界が実際に一つになっていった過程を映しています。ただし同時に、年表を作る側の分類の都合でもあります。たとえば世界恐慌はアメリカ合衆国の株式市場から始まりましたが、影響が各国に及んだためこの行に置きました。別の分け方をすれば、別の並びになります。年表の行の分け方そのものが一つの見方だということは、頭の隅に置いておいてください。

この読み物で取り上げた出来事(32件)

年表に収録している項目です。出来事名を押すと、年表のその位置が開きます。補足・背景・帰結・出典は時代別のページに載せています。

年代地域出来事
前800000年世界規模火の使用を示す遺構
イスラエル・ゲシャー ベノット ヤーコブ遺跡など。恒常的使用の開始時期は議論がある。
前70000年世界規模ホモ・サピエンスのアフリカ外への拡散
遺伝学と考古学の双方から復元された移動。時期には幅がある。
1206年〜1368年世界規模モンゴル帝国期のユーラシア交易網
陸路の東西交通が一時的に安定した時期。
1271年〜1295年東アジアマルコ・ポーロの旅行
口述をまとめた『世界の記述』がヨーロッパに広く読まれた。
1325年〜1354年アフリカイブン・バットゥータの旅行
西アフリカから中国まで巡り、『三大陸周遊記』を残した。
1492年南北アメリカコロンブスの大西洋横断航海
以後、大陸間の人・作物・病原体の移動が本格化した。
1498年南アジア・東南アジアヴァスコ・ダ・ガマのカリカット到達
ヨーロッパとインドを結ぶ海路が開かれた。
1500年〜1700年世界規模大陸間の作物・家畜の交換
トウモロコシ・ジャガイモ・トマトが旧大陸へ、コムギ・ウマ・ウシが新大陸へ広がった。
1518年〜1600年世界規模感染症の南北アメリカへの伝播
天然痘・麻疹などが持ち込まれ、先住民の人口が大きく減少した。
1519年〜1522年世界規模マゼラン船団の世界周航
地球を一周する航海が初めて完了した。
1600年〜1800年世界規模大西洋奴隷貿易の拡大期
この期間に最も多くの人々がアフリカから南北アメリカへ強制的に移送された。
1837年世界規模電信の実用化
符号による遠距離通信の方式が、イギリスとアメリカでほぼ同時期に特許化された。実用回線の開通は1839年と1844年。
1866年世界規模大西洋横断電信ケーブルの敷設
ヨーロッパと北米が数分で通信できるようになった。
1869年南北アメリカ大陸横断鉄道の開通
北米東西の輸送日数が大幅に短縮された。
1891年ヨーロッパシベリア鉄道の起工
ロシアが極東への輸送路を建設した。
1914年〜1918年世界規模第一次世界大戦
総力戦の形態がとられ、多数の国が参戦した。
1914年南北アメリカパナマ運河の開通
合衆国が工事を引き継いで運河を完成させ、南米南端を回る必要がなくなった。
1920年〜1946年世界規模国際連盟
史上初の常設的な国際平和機構。アメリカは加盟しなかった。
1929年世界規模世界恐慌の始まり
ニューヨーク株式市場の急落を契機に各国へ波及した。
1944年世界規模ブレトン・ウッズ協定
ドルを基軸とする固定相場制とIMF・世界銀行の設立が決まった。
1945年世界規模国際連合の発足
連合国50か国がサンフランシスコ会議で憲章に署名し、同年10月に発足した。
1947年南アジア・東南アジアインドとパキスタンの分離独立
大規模な人口移動を伴った。
1948年世界規模世界人権宣言の採択
国際連合総会で採択された。
1955年世界規模バンドン会議
アジア・アフリカ29か国が参加し、平和十原則を採択した。
1960年アフリカアフリカの年
1年間に17か国が独立した。
1975年オセアニアパプアニューギニアの独立
オーストラリアの施政下から独立した。ニューギニア側は国連の信託統治領、パプア側はオーストラリアの属領だった。
1991年世界規模World Wide Webの一般公開
CERNで開発された文書共有システムが外部に公開された。
1995年世界規模世界貿易機関(WTO)の発足
GATTを引き継ぎ、紛争処理の手続きが整えられた。
1997年世界規模京都議定書の採択
先進国に温室効果ガスの削減目標が課された。
2008年世界規模世界金融危機
アメリカの住宅金融市場を起点に各国へ波及した。
2015年世界規模パリ協定の採択
気候変動に関する国際的枠組み。
2020年〜2023年世界規模COVID-19の世界的流行
世界保健機関が2020年3月にパンデミックを宣言した。