人はどうやって時間を測ってきたか
年表そのものが、時間を測った結果でできています。では、その目盛はどこから来たのでしょうか。一年の長さ、紀元前と紀元後の境目、世紀の区切り。どれも誰かが決めたものです。年表の上で、人が時間をどう数えてきたかをたどってみましょう。
川が暦を作る
前3100年ごろ、アフリカの行にエジプト第1王朝の成立。エジプトでは、ナイルの増水の周期から一年の長さが把握されました。農耕には、いつ種を播くかを知る必要があります。暦は、天体への関心から始まったというより、農耕と行政の必要から整えられていきました。年表の同じ区間に並ぶ灌漑と都市の項目と、あわせて見てみてください。
天体を数で書く
150年ごろ、アフリカの行にプトレマイオス『アルマゲスト』。アレクサンドリアでまとめられた本で、天体の動きを数学で記述しています。この体系は、以後1400年にわたって参照され続けました。年表を少し左へ戻すと、前300年ごろにアレクサンドリアのムセイオンと図書館。知識を集める場所と、そこでまとめられた本が、同じ都市に並んでいます。
別の暦、別の起点
250年ごろ、南北アメリカの行にマヤ古典期。マヤには独自の暦があり、長期の日数を数える方式を持っていました。622年、西アジアの行にヒジュラ(メディナへの移住)。イスラーム暦はこの年を元年とし、月の運行に基づくため、太陽暦とは一年の長さが違います。この年表は西暦の一本の軸で作られていますが、それはあくまで並べて見るための便宜です。どの社会にも、その社会の起点がありました。
空の見方が組み替わる
1543年、ヨーロッパの行にコペルニクス『天球の回転について』刊行。1609年には、同じ行でガリレオの望遠鏡観測とケプラーの惑星運動の法則が縦に並びます。この区間で、天体の位置を計算する枠組みが入れ替わりました。年表ではこれらを「科学・技術」の分類に入れています。分類の表示をこの区間で切り替えてみると、同じ時期に宗教・思想の項目も多いことが見えます。
時刻をそろえる必要が出てくる
1873年、日本の行に太陽暦の採用。明治政府が従来の暦から切り替えた項目です。同じころ、世界規模の行には1837年の電信の実用化と1866年の大西洋横断電信ケーブルの敷設があります。情報が瞬時に届くようになると、場所ごとに違う時刻では不都合が出ます。1891年のシベリア鉄道の起工のような長距離の鉄道も同じです。年表のこの区間は、時間の基準が各地でそろえられていく場所として読めます。
地上を離れて測る
1957年、ヨーロッパの行にスプートニク1号の打ち上げ。人工衛星は、地上の位置と時刻を測る手段を変えました。年表の現代の区間には、1969年のアポロ11号の月面着陸、1991年のWorld Wide Webの一般公開が並びます。時間と位置の基準が、どこからでも同じものを参照できるようになっていきます。
記録のない時間をどう測るか
ここまでは、人が自分で時間を数える話でした。では、誰も数えていなかった時代の年代は、どうやって決まるのでしょうか。年表の先史の区間にある項目は、遺跡の地層の重なり、火山灰の層、放射性炭素による年代測定などから推定されています。測り方そのものが20世紀の技術です。約700万年前のサヘラントロプス・チャデンシスの化石年代のような項目は、人が測った時間ではなく、人が後から測り直した時間だということになります。年表でこれらの項目に「およそ」や「諸説あり」が付いているのは、そのためです。
年表を読むときに
この年表の横軸は、区間ごとに縮尺が違います。先史は対数の目盛、それ以降は等間隔です。700万年と100年を同じページに載せるための工夫で、時間の性質が変わるわけではありません。それから、年表の「前1年」の次は「1年」で、0年はありません。西暦の数え方にゼロが入っていないためです。世紀の区切り(1世紀は1年から100年)も、同じ約束から来ています。
この読み物で取り上げた出来事(16件)
年表に収録している項目です。出来事名を押すと、年表のその位置が開きます。補足・背景・帰結・出典は時代別のページに載せています。
| 年代 | 地域 | 出来事 |
|---|---|---|
| 前7000000年 | アフリカ | サヘラントロプス・チャデンシスの化石年代 中央アフリカのチャドで発見。人類系統に属するかは研究者により見解が分かれる。 |
| 前3100年 | アフリカ | エジプト第1王朝の成立 上下エジプトの統一とされる時期。 |
| 前300年 | アフリカ | アレクサンドリアのムセイオンと図書館 地中海世界の学術が集積した。 |
| 150年 | アフリカ | プトレマイオス『アルマゲスト』 地球中心の天体運行モデルを体系化した。 |
| 250年〜900年 | 南北アメリカ | マヤ古典期 文字・暦・数学を備えた都市国家群が並立した。 |
| 622年 | 西アジア・中東 | ヒジュラ(メディナへの移住) イスラーム暦の紀元とされる。 |
| 1543年 | ヨーロッパ | コペルニクス『天球の回転について』刊行 太陽中心の天体模型を提示した。 |
| 1609年〜1619年 | ヨーロッパ | ケプラーの惑星運動の法則 精密な観測データから楕円軌道を導いた。 |
| 1609年〜1610年 | ヨーロッパ | ガリレオの望遠鏡観測 1609年に望遠鏡を自作して月面の凹凸を観測し、翌1610年に木星の衛星を発見した。 |
| 1837年 | 世界規模 | 電信の実用化 符号による遠距離通信の方式が、イギリスとアメリカでほぼ同時期に特許化された。実用回線の開通は1839年と1844年。 |
| 1866年 | 世界規模 | 大西洋横断電信ケーブルの敷設 ヨーロッパと北米が数分で通信できるようになった。 |
| 1873年 | 日本 | 太陽暦の採用 明治5年12月3日を明治6年1月1日とした。 |
| 1891年 | ヨーロッパ | シベリア鉄道の起工 ロシアが極東への輸送路を建設した。 |
| 1957年 | ヨーロッパ | スプートニク1号の打ち上げ ソビエト連邦。世界初の人工衛星。 |
| 1969年 | 南北アメリカ | アポロ11号の月面着陸 人類が地球以外の天体に降り立った最初の事例。 |
| 1991年 | 世界規模 | World Wide Webの一般公開 CERNで開発された文書共有システムが外部に公開された。 |